凱風舎
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火のないところに・・・

 

 

  ああ、神よ、この私をあの大悪魔の牙からまもりたまえ!私の杖の反響が消えるや否や、これまた墓の中から、答える聲があったのだ!

 

   ― ポオ 「黒猫」 (中野好夫 訳)―

 

 うーん。
 「藪の中」と言わんよりは、むしろ「藪ヘビ」でした。
 いや、藪を叩いてヘビを出す、と言うよりも、むしろ家宅捜索を受けた後、殺した妻を埋めたレンガの壁を思わずステッキで叩いてしまったポーの「黒猫」の主人公になってしまった、と言う方が正確でしょうか。
 せっかく気取っていたのに、壁の中から「真相」を告げる黒猫の不気味な声が聞こえてきた、と言うべきでしょう。
 (まあ、不気味、というにはあまりにもおもしろかったんですけどね。)
 
 わたしも誰かのように
  「そんなのは検察の作文である!」
と言いたいけれど、邑井氏の文章を読んでいると、なるほど確かにそうだったような気がしてくるから不思議です。
 念のために今日昼間お勉強にやって来たカズサちゃんにわたしのと邑井氏の文章を読ませたところ、くすくす笑いながら
 「絶対、先生、こうやってたに決まってる!」
と、断固邑井氏支持を表明されてしまいました。
 やっぱりね。

 まあ、どう考えてみたって、当時のテラニシが他人が打ったファールボールを自分で拾いに行くはずがないもんね。(今だって行かないけど)
 それに、わたしがまるっきりノ―コンだったというのも、なるほどそういわれればそうだったはずで、「球威よりも恫喝」で年下を黙らせるというのも、塾の先生をやっている今も続くわたしの得意技ですからね。
 邑井氏の話の方がずっと信憑性が高い。
 というか、人は話がおもしろい方を信じますからねえ。
 絶対これが「ホントの話」になっていってしまいますね。

 それにしても、まったく、ろくな高校生じゃなかったんだなあ、わしは!