あいたたたたたっ
「痛い思いをさせることは問題じゃない。でも痛い思いをさせようとするのは問題だぞ。」
― E.M.フォースター 『果てしない旅』 (高橋和久 訳) ―
ヤギコはわたしを噛みます。
ほかの人は噛みません。
なぜ噛むのかよくわからないのですが、噛みます。
噛むのは足の指か、ひじです。
たいていは軽く噛むだけなのですが、ときどきびっくりするくらい本気で噛みます。
で、
アイタタタタタ!
と、わたしが声を出して痛がると、彼女はいかにも
わたしはとんでもなくワルイコトをしてしまったのだ
というふうに、そのままその場でじっとしていてしまいます。
俗に言う「固まってしまう」という状態です。
あたかも反省しているかのようですが、わたしの声にただ驚いただけなのかもしれません。
でも、まるで深く反省しているようなその様子を見ると、わたし、思わず笑ってしまいます。
でもね、猫ですからね、しばらくすると、忘れるんでしょう、やっぱり噛みます。
さっきもわたしの足の指、噛みました。
ヨワッタものです。
引用は、小さな息子が駄々をこねて自分のおなかを蹴飛ばしているときに父親が息子に言うセリフです。
そうです。
過失ならばともかく、意図的に人に痛い思いをさせようとしてある行為を行うことはよくないことです。
これは猫だったら許されても、人がやってはいけないことの一つです。