特別天然記念物
多くの目高達は、藻の茎の間を泳ぎ抜けることを好んだらしく、彼等は藻の林のなかに群れをつくって、互いに流れに押し流されまい努力した。そして、彼らの一群は右によろめいたり左によろめいたりして、彼等のうちの或る一ぴきが誤って左によろめくと、他の多くのものは他のものに後れまいとして一せいに左によろめいた。若し或る一ぴきが藻の茎に邪魔されて右によろめかなければならなかったとすれば、他の小魚達はことごとく、ここを先途と右によろめいた。それ故、彼等のうちの或る一ぴきだけが、他の多くの仲間から自由に遁走していくことは甚だ困難であるらしかった。
山椒魚はこれ等の小魚たちを眺めながら、彼等を嘲笑してしまった。
「なんといふ不自由千万な奴らであらう!」
― 井伏鱒二 『山椒魚』 ―
今夜NHKの「ダーウィンが来た」という番組はオオサンショウウオだった。
オオサンショウウオはすごいな。
なにしろ、1メートルを超えるような図体をしていながら、目なんて5円玉の、その穴ほどの大きさしかないのだ。
体のいぼいぼと区別もつかないほどのそんな小さな眼玉を横広につぶれた顔の両側に付けて、こいつは流れの脇の自分の洞穴にじーっとしている。
それで、ときどき息を吸いに水面に顔を出す。
そして、またじーっとしている。
で、目の前に魚が来ると、めちゃくちゃ大きな口を開けて、ぱくりと食べてしまう。
一日一回、イワナ一匹。
それしか食わないらしい。
あとはじーっとしている。
すごいなあ!
なんだかワクワクして見てしまった。
エライ奴だ。
というわけで、今日の引用は日本一の小説『山椒魚』から。
別にテレビで民主党の代表選挙の様子を見たから引用したのではなく、あくまでオオサンショウウオを見たから載せただけです。