《腹心の友》
「君はいつも金鉱を発見しているんだね」
― モンゴメリ 『アンの愛情』 (村岡花子訳) ―
なぜか知らないが、今年になって
6月っていいなあ
と思うようになった。
雨の日も、曇りの日も、晴れた日も、その日がどんな日でも
いいなあ
と思っている自分がいるのに気づく。
部屋に一日いるときも、外をぶらぶら歩いているときもそう思っている自分がいる。
これはどうしたことだろう。
そんなこと、思ってみたこともなかったのに。
だから、というわけでは全然ないのですが、今日は雨の音を聞きながら、本棚から取り出した『アンの愛情』を読んでおりました。
やっぱりおもしろい。
最後にはアンとギルバートがめでたくおさまるべきところにおさまって、私はたいへん満足です。
とはいえ、
Anne of Green Gables
という表題を、訳者の村岡花子さんが
『赤毛のアン』
としたのはとてもすばらしいお手柄だと思うのですが、
『アンの青春』 ( Anne of Avonlea)
とか
『アンの愛情』 ( Anne of the Island)
とかいう表題はなんとかならんかったのでしょうか。
この年になってもちょいと気恥しくて手に取り難いところがあるのですが、若いころ、これを本屋のレジに持っていくのは相当勇気が要ったことを覚えております。
青春、愛情、幸福・・・。
自意識過剰と言われればそれまでですが、この表題では男たるもの、絶対尻込みします。
アンという子の楽しさに魅かれて結局は買ってしまったのですが、なかなかつらいものがある。
男の子が読んだって絶対いいい気持になれるいい本なのに、この表題のせいで相当数の男が読みそこねているにちがいありません。
もったいないことです。
引用はギルバートがアンにいう言葉です。
さすが、愛する男は一言で相手を正しく定義してしまいますな。
どこにだって《金鉱》を発見できる女の子はすてきに決まっています。