行カザルベケンヤ!
中央フリーウェイ
右に見える競馬場
左はビール工場
この道はまるで滑走路
夜空につづく
― 荒井由美 「中央フリーウェイ」 ―
ぐふふ。
きのう、俊ちゃんからひさしぶりに電話がありました。
といって、別に、私が若い娘で俊ちゃんが私の恋人というわけではないのだから、もちろん、彼から電話が来たからといって、それだけで私が
ぐふふ。
てな、わけではない。
ぐふふ。
の理由はその電話の内容ですな。
「じいさん。日曜、ひま?」
「ひまだよ。子どもらの試験も終わるし。」
「東京競馬場なんて、どうですか? 指定席とれたんですけど。」
A Dangerous Temptation!
危険な誘惑。
でも、よきお誘い、です。
あのう、言っときますけど、今度の日曜日は《日本ダービー》の日なんですな。
「ダービー」といえば、あなた、競馬の代名詞みたいなもんですよ。
そのダービーが行われる東京競馬場の指定席が取れたと言うんだもの。
行カザルベケンヤ!
です。
実は、私、ダービーをナマで見たことがない。
もちろん、二つ返事。
でもね、東京競馬場は、遠い。
同じ競馬場でも中山競馬場なら電車で15分ほどのところにあるのに、東京・府中の競馬場は2時間はかかります。
金沢から電車で2時間といえば、琵琶湖が見えてきますぜ。
近江の国。
芭蕉の
行春を 近江の人と おしみける
の、近江、です。
もっとも、こっちだって下総の国から武蔵と相模の国境あたりまで行くんですから、しょうがありませんな。
なんせ、ダービー、ですから!
まあ、荒井由美の歌のように「中央フリーウェイ」を走って行くんじゃなくて、総武線&京王線の乗り継ぎなんですけど、気分はすでに、五月の風吹く緑のターフを前にして
右手に競馬新聞
左手にビールの紙コップ
で、当たろうが当たるまいが、まあいいかっ、って気分になっております。
そうは言っても勝負ですからね。
そのうえ、その日の様子は俊ちゃんが「みんなのおたより」コーナーで、写真付きのやつを載せるだろうと思うので、なるべく
当たり馬券を手にVサイン
という、ごくありきたりの写真にしたいんですが、すでに気分がハイになってますからね、結果はだいたい見えております。
はずれ馬券の山を前にうなだれる二人
でしょう。
とはいえ、勝田氏が紹介されていた和合亮一氏の「詩の礫」のように、地の下を
何億もの馬が怒りながら
あるいは
泣きながら 駆け抜けていく
のを耳にし体で感じるのは、もうごめんですが、18頭の若駒が大地を蹴り、目の前を駆け抜けてゆく蹄の響きは聞いてみたい。
とりあえず、日曜がよいお天気でありますように!!