凱風舎
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Forget-me-not

 

   わすれなぐさ   
               ヰルヘルム・アレント

 

 ながれのきしのひともとは、
 みそらのいろのみづあさぎ、
 なみ、ことごとく、くちづけし
 はた、ことごとく、わすれゆく。

 

     ― 上田敏 『海潮音』 ―

 

 昨日は「忘れ草」。
 今日は「わすれなぐさ」 。

 中学校のとき女の国語の先生が『海潮音』の中のいくつかの詩ををプリントにしてくれた。 
 その中にこの詩もあった。
 『海潮音」なんて中学生には難しい言葉もいっぱいあるのに、その先生はただ読んでみせて
  すてきねえ。
と自分だけがうっとりしていた。
 けれど、それがたぶん、一番いい詩の教え方だったみたいな気がする。
 響きの心地よさ、言葉のうつくしさがちゃんと伝わった。
 みんなあんまり好きじゃなかったみたいだが、私はその先生が嫌いじゃなかった。
 中学校の先生なんて名前もおおかた忘れてしまったが、この「わすれなぐさ」を教えてくれたその先生のことは忘れていない。