凱風舎
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名水百選黒部立山の天然水

 

 「このわんぱく人形さん、いったいどうしてわたしだということがわかったの?」
 「ぼくあなたがだいすきでしょう、だからあなたということがわかったのです」

  ー コッローディ 『ピノッキオの冒険』 (杉浦明平 訳) -

 

 

 昨日のやかんには名前があるんだろうか。
 そして、水をもらったあの白い花は、水をくれたやかんとほかのやかんの区別がつくんだろうか。
  「あなたね!注ぎ口のところが少し黒くなってるもの。
  あなたがあのとき、いつも水をくれてたやかんさんね!」
なんて、お花も、あのやかんのことを、ピノッキオみたいに大好きなら、わかるかもしれないね。
 でも、あれはなにしろ《未確認飛行物体》だからね。そもそも、あれがやかんだったなんてことすらお花にはわかってないかもしれない。
 そしたらそのとき、そのことをあのやかんはかなしむんだろうか。さみしがるんだろうか。
  「なんだよ、せっかく毎晩息せき切ってとんできてやったのに。」
なんて。
 でも、きっと、かなしまないと思うな。
 だって、たのまれたわけじゃないだもの。
 ただただ、あのお花に水を上げたいなって思って飛んだんだもの。
 そして、一生けんめい飛んで、水をお花に上げて、それですっかり自分が軽くなったとき、あのやかんはそれだけでもうすっかりいい気持になってたはずだもの。
 行くときは前かがみだったくせに、帰りは軽くなってるからね、注ぎ口を少し上に向けて、ひょっとしたらそこから口笛まで吹いて帰ってきたはずだもの。
 きっとね。

 ボランティアって、きっとそんなもんだと思うんだけど、ちがうのかな。
 すくなくとも、いま日本の空を被災地に向かって全国からたくさんの《未確認飛行物体》が飛んでいることだけはたしかだよね。