凱風舎
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すばらしかった!!!!

耳を澄ませば澄ますほど、神は、いるのさ。

- 恒 十絲 『彼方、蓮台野にて U-BA-SUTE-』 -

 

 舞台からそれまで役を演じていた者たちが消える。残されているのはそれまで彼らが付けていた五枚の仮面。それが舞台の真ん中に宙づりにされている。そこに津軽三味線が響く。棹を上下する指が糸をこする音。皮に叩きつけられる撥。・・・。
 舞台、と書いたが、それはお寺の本堂だ。
 横浜市港南区上永谷。
 貞昌院。

 今日、恒十絲(高崎恒男君)の芝居を観てきた。
 言っておく。
 すばらしかった!!!
 言っておく。
 ツネオはただものじゃあない。
 そして、主役の朱尾尚生さんという役者もまた、ただものじゃあなかった。

 私は芝居なぞキライである。
 これまで何度か観る機会があったが、一度もよいと思ったことがなかった。
   クダラナイ!
 どんな劇団の芝居を観てもそう思った。
   何がおもしろくてこいつらはこんなものをやってるんだろう。
 いつもそう思って帰って来た。
 高崎君が劇団を作ったばかりの頃、出かけた私は開始十五分で観るのを止めて帰って来た。
   ひどいね。
 そう思った。
 あれから九年近くが経った。その間彼の芝居は観ていない。
 だから、びっくりした。
 彼は、この九年を一所懸命にやってきたのだ。
 芝居がはねた後そのことを思った。
 
 演じる者の肉体が張りつめていた。
 しなやかに、それでいてどこもゆるまぬ身体がそこにあった。
 鍛えるというのはこういうことかと思った。 
 私は感動した。

 彼の劇から inspire されたことがたくさんあった。(特に仮面について。)
 そのことについてそのうち書きたいと思うが、たぶん勝田氏は顔をしかめるだろうな。(でも書くよ。)

 こんなに interesting  なものなら大石君も誘えばよかった。
 たぶん、杉本君もこれ観たなら、なにがしかの哲学的考察の刺激を受けたに違いない。
 そして、小薗美穂さんを誘えば、彼女は舞踊と芝居における身体のありようについて新たなアプローチを始めたかもしれない。

 それにしても高崎恒男はただものじゃないぞ!
 私、とてもうれしかった。