足跡
雪あたたかくとけゆけり
しとしとしとと融けゆけり
ー 室生犀星 「ふるさと」 -
昨日の夜降り積もった雪が今朝はもうあたたかな陽に融けている。窓を開けると軒からしたたる雪の滴が日にきらきらと輝いている。向かいの屋根にまだ融け残る雪がまぶしい。
今日は公立高校の入学試験。
朝、試験会場に向かったときに彼らが雪の上につけた足跡も、今はもうとけてあとかたもない。あるのはあかるい春の日差しばかりだ。
こんな日が彼らの入学試験だなんて、なんてよいことだろう。
彼らが合格したとき、自分が立ったその丘の上での誇らかな気持ちが、自分がそれまでたどってきた足跡への誇りではなく、これから自分がさらなる高みへと向かうことへの誇りでありますように!
そんなことを、今日の淡雪が教えてくれているようだ。
引用した2行で始まる犀星のこの短い詩は、こんなリフレーンで結ばれているよ。
もえよ
木の芽のうすみどり
もえよ
木の芽のうすみどり
芽吹こうとする若い木々たちの芽に、やはらかな春の日差しが、たくさんたくさんふりそそぎますように!