と・き・ど・き・す・て・き
風はときどきすてきだ。
- 渡辺武信 『風の中から』 -
去年の秋口、かつての生徒である山田さんから電話があって
「突然なんですけど、あのう、凱風舎のホームページを作りたいんですけど」と言う。
実は私は世にホームページなるものがあることは知ってはいたが、それがいかなるものなのかよく知らない。よくは知らないが、それでも、そういうものはきっと宣伝に使うものだろうと思って、
「宣伝ならイヤダよ」と言ったら、
「そんなんじゃなくて、ただテラには《凱風通信》を書いてもらいたいだけ!」と言う。
《凱風通信》というのは、もう十何年も昔、私がヒマに飽かせて塾の子供相手にほとんど毎日書いていたものだが、そんな説教臭いものを今はすっかり大人になった昔の生徒たちが読んで面白いと思うのか、はなはだ心もとない。
しかるに山田さんは
「だってこのごろの先生はずっとインプットばかりで全然アウトプットがないから」と言う。
「そういうのって、ダメでしょ」と言う。
「ダメでしょ」と言われても、この間私がインプットしたものと言えば、夜毎のアルコールと折りあるごとのニコチン以外に思い当たるものもないのだが、この山田さん、やけにハリキッテいる。ハリキッテいる女性に水を差す勇気、は、昔から、私には、ない。
これは、運動会の応援団のリーダーになるのだ!と言って鼻の穴をふくらませている女子中学生には、誰だって水は差せないのとおなじである。
「じゃあ、書くよ」
そう言うと
「ホント!」
いかにも山田さんうれしそうである。
というわけで始まったこのプロジェクト(!)のその後の経緯については、たぶんは山田さんや大石君、俊ちゃんあたりから報告がなされるのだろうから省かせてもらうが、私がその間、ただただ彼らがやることを眺めていただけであることは改めて報告するまでもないことであろう。
そんなわけで、今日から《凱風通信》を書き始めることになったんだが、大人相手だからなるべく気張らず書いていきたいと思っているんだが、根がアツクルシイ人間だからなあ・・・。
ところで、冒頭の引用は何! と言われそうだが、昔子供相手のとき、必ず冒頭に何かを引用していたので、ついつい書いてしまっただけです。これもそのころ引用した文の一つ。
まあ、「凱《風》通信」ですし、ときどきは「すてき!」などと言ってもらえる文章が紛れ込めばと思っている次第です。