凱風舎
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レイジィ大石君

2014/12/22~2014/12/28

–爺の考では恐らく、女に溺れる男も男に眩む女もなし、(中略)おまへの心から製へた影法師におまへが惚れて居る計り
(幸田露伴「風流仏」)

2014/12/22(月)
17:30仕事上がり。
19:30「手を挙げろ」(1985年ポーランド、イエジー・スコリモフスキ監督)
元々、1967年に作られたスコリモフスキ監督の映画が、検閲を食らって公開できず、1980年代になって公開が可能となったという作品。
公開が許可された後に監督自身が25分間のプレリュードを作って再構成した映画。
追加された25分は恨み節です。オレの映画を差しとめたのはナンタラ将軍、お前だろう。お前はオレの自信をすべて奪っていったんだ。みたいなメッセージが、意味ありげな映像とともに流される。ちょっと寝た。
25分のプレリュードの後に、あるパーティーが映し出される。ここで、やっと本編が始まったなと思って見ていると、よくわからない。
見ていると、どうやら、4人の若い男と1人の女の話だということが分かる。
同窓会のパーティーで盛り上がっているらしい。
終電を逃した5人は、深夜走る貨物列車の車掌にお金をわたし、貨物列車の車両に乗り込む(らしい)。
その車両の中で、持ち込んだ大量のろうそくに火をともしたり、車両の中にあった石膏に水を入れて5人のうちのお調子者を石膏まみれにしたり、女の子がネックレスの中に隠し持っている薬をみんなで飲んだりする。
やがて彼らは、学生時代にスターリンの肖像画(写真かな)を作ろうとして、失敗(スターリンの顔の目の部分がだぶって、目が四つになってしまっている)し、それにより、追及を受けていたことが分かる。
そういったことやら何やらを貨物列車の1車両、しかも、中からドアを開けることのできない車両の中での5人による乱痴気騒ぎで表現している。
スターリンは1953年に死んでいるので、元となる映画が作られた1967年には、スターリンの死は14年前の出来事である(たしかこないだ見た、「裏面」には、スターリンが死んで主人公の母子が隠れて喜ぶ描写があった)。
描かれている5人はどうやら20代の後半位の設定なので、彼らの学生時代のことはどうやらスターリンの死後のことであるだろうと思うのであるが、スターリンが死んだあとでも、そういう体制は続いて行ったのであろうなという所がポーランドのややこしいところだなぁと。

家に帰り、「ナイアガラ」(1953年ヘンリー・ハサウェイ監督)。録画。
マリリン・モンローが出ている映画をまともに見たの初めてかもしれない。割と面白かった。

2014/12/23(火)
体調不良。
7時に目覚ましをかけており、7時に目覚めるも、脱力感がひどく、動く気力が起こらない。
かろうじて動かせる手で、携帯電話をいじり、ゲームをしたり、音楽を聴いたりする。
10時から、映画のチケットを取っていたのであるが、気力なくスルーする。
せっかく予約していた映画をスキップしたこともあり、気分がおち、ずっと寝ていた。
7時に起き、9時くらいまで布団にくるまったまま携帯をいじり、そのまま寝て、13時くらいにおなかがすいて起きるも、動く気力がないので、「あぁーあぁー」とか言いながら過ごし、なんとか起きて、冷凍庫にあったレンジでチンするスパゲッティをチンして食べる。味がしない。
15時くらいに録画していたアメフトを見ながら寝て、20時くらいに目が覚める。
頭も大分、スッキリしてきた。
シャワーを浴びて、途中で止めていたアメフトの続きを見つつまた寝る。

2014/12/24(水)
昨日、一日中寝ていたので大分心持がよくなる。
17:30仕事上がり。
18:50「こっぱみじん」(2013年日本、田尻祐司監督)
今年このような映画がやっていることすら知らなかったので見逃したというわけではないけれど、「見逃した映画祭」でやっているのだから何かあるのかなとあまり期待せず見る。
とても、面白かった。
群馬県の田舎町で美容師の見習いをしている女の子カエデを主人公に、彼女の兄リュウと、兄の恋人ユキ、幼少時代の幼馴染のタクヤを中心に、というか彼らのみで話が進んでいく。
(多分、皆さん、この映画、私と同じでやっていたことも知らないだろうし、この映画がこれから先、どこかの映画館でかかるとも思えないし、かかったってわざわざ見に行く奇特な人がいるとも思われないので、ネタばれとか気にせず行きます。事前情報なく見たい人はここから先、読まないように。まあ、ネタがばれて魅力が半減するような映画でもないので、見る前に読んでも一向に差し支えはないと思うけど)
東京から帰ってきて地元の病院に勤め始めるタクヤと彼を幼少時代から「タクちゃん」としたい恋心を抱くカエデ。幼馴染の二人の淡い恋心が甘ったるく描かれるのかと思いきや、実は、タクヤは女ではなく男しか愛せない人間であり、しかも、彼が思いを寄せているのは幼馴染である、カエデの兄のリュウであるという展開になり、加うるに、リュウの恋人ユキがリュウとは別の男の子どもを妊娠していることが発覚し、、、
そういう抜き差しならない3すくみの状態が突如現れ、はぁーと思い観ていました。
ただ、狭い。
カエデやタクヤ、リュウら登場人物の生きる世界がとても狭い。
なんで、こんなに狭いんだろう?
これが何かの寓話だったら(たとえばこないだ見た「ワンダフルワールドエンド」みたいな)、このように限定された空間、関係性で展開される話にも必然性が感じられるんだけど、そんな風には作られていない。
あくまで、幼いころ同性とともに感じてしまった性的体験にとらわれるタクヤと、タクヤを好きなだけのカエデがさしたるブレイクスルーもなく、限定された空間で苦しんでいるだけの話になっている。
この物語が始まるまでのタクヤには、自暴自棄になって、いろいろな男と関係を持つ可能性もあるわけだし、カエデにしてもタクヤを気にかけつつ、好きだか何だかわからない男と付き合ったりなんかするより他の道を選ぶことだって可能だろうと、というか、なんでそうしないのかがわからない。
群馬の片田舎という限定された空間で、限定されたと思いこんでいる関係性の中で勝手に苦しんでいるように見える。
世界はそんなに狭い空間の中でしか展開しないものであるわけではないと僕は思う。

2014/12/25(木)
17:30仕事上がり。
18:40「マップ・トゥ・ザ・スターズ」(2014年カナダ=アメリカ=ドイツ=フランス、デヴィット・クローネンバーグ監督)@新宿武蔵野館。
武蔵野館、「あと1センチの恋」人気が止まらないらしく、ロビーが今まで見たことないような女子高生やら、カップルやらであふれている。
仕事帰り、18:00に劇場に着いた段階で、18:55開始の「あと1センチの恋」はすでに満席立ち見となっている。
はぁーと思いつつ、18:40スタートの「マップ・トゥ・ザ・スターズ」を購入。整理番号20番でした。
前作「コズモポリス」がじわじわくる傑作で、2013年トップレベルに面白かったクローネンバーグ監督の最新作。
姉弟間の恋愛と結婚、焼死した母とその娘の関係性とその因果というギリシャ神話的展開がハリウッドを舞台に繰り広げられるのであるが、いまいち集中できない。というのも、映画がはじまる前、予告編が始まるころに劇場に入ってきた明らかに「あと1センチの恋」を見られなかったらしき不倫カップルみたようなオッサンと若い女が入ってきて、よりによって隣に座るなり、べちゃくちゃべちゃくちゃ、阿呆のような会話をつづけている。
ここは「マップ・トゥ・ザ・スターズ」ですよ、何か間違えてませんか?クローネンバーグ監督の作品ですよ、とか思いつつ、まあ、予告編のうちは別に良いかと思いつつ、いざ本編が始まっても、まだ、どうでもいいことをしゃべっている。
何なんだと言うのはみんな思ったらしく、前の座席の人が後ろを振り向いたりしている。
ちょっと我慢が出来なかったので、肘でつつきつつ「スイマセン、ウルサインデスケド、、、、!!!!」というと「あ、スイマセン」とか言って静かになったものの、なんだかこっちの気持も落ち着かず、集中できない。
まだまだ、修行が足りないなと思う今日この頃です。
もう1回見たいなと思うけど、「あと1センチの恋」がやっている武蔵野館は勘弁してもらいたい。ヒューマントラストシネマあたりでやってくれれば良いんだけどなぁ。

2014/12/26(金)
月に一度の帰社日。
20:00くらいまで事務作業。
2014年仕事おさめ。

2014/12/27(土)
10:30「炎上」(1958年日本、市川崑監督)@角川シネマ新宿
三島由紀夫の「金閣寺」の映画化。
劇中では「金閣寺」ではなく「聚閣寺」となっている。
何だろうこれは、とみていてとても面白かった。

13:00「眠狂四郎 無頼剣」(1966年日本、三隅研次監督)
新潟県は弥彦から産出される油を精製する技術を大塩平八郎の弟角乃進から奪ってわがものとしようとする油問屋の弥彦屋と、技術を奪われた恨みから、弥彦屋を狙う角乃進門下の一味、また、それとはべつに、弥彦屋許すまじと狙う藤村志保演じる勝美の話。

15:40「アデル、ブルーは熱い色」(2013年仏、アブデラティフ・ケシシュ監督)
この映画見るの3度目だけど、何度みても最高です。素晴らしい。
こんなにステキな映画はない。
3時間近くある映画だけど、まったく退屈しない。
ラストシーン近く、アデルとエマが喫茶店で会うシーンとか、思い出しただけで泣いてしまうよ。
「知ってるでしょ。」「、、、」「私、意味もなく泣くの」「うん、、、泣き虫」
切なすぎ。いとおしすぎ。素晴らしすぎ。
ずっと見ていたい映画。

19:00「アンダー・ザ・スキン」(2013年イギリス、アメリカ、スイス、ジョナサン・グレイザー監督)
日本公開時に話題になっていた作品。
割引が効かない映画館でやっていたので見れていなかった(貧乏なんです)。
見てもよくわからない作品であるということは前評判で聞いていた。
はたして、わけがわからない作品であった。
スカーレット・ジョハンソン(「真珠の首飾りの女」であの少女を演じていた女のひと)が、スコットランドのド田舎で逆ナンを繰り返しては、引っかける男を暗い部屋の水の奥底に沈めていくという話。
監督は、ジャミロクワイのかの有名な「Virtual Insanity」を撮った人(これね)。
というか、スコットランドなまりがきつすぎて、スカジョの話す言葉以外は字幕がないとまったく聞き取れない映画でした。
そういう意味で途中「ロスト・イン・トランスレーション」的な感じもある。
ただ、未来的な、ソラリス的な、2001年宇宙の旅的なよくわからないけどすごい映像と、スコットランドのド田舎の自然の対比がよかった。

2014/12/28(日)
10:30「破戒」(1962年日本、市川崑監督)@角川シネマ新宿
めちゃくちゃ面白い。
これは、今まで見た市川雷蔵映画の中でもベストかも知れない。

13:00「斬る」(1962年日本、三隅研次監督)
よくわからない映画だった。

この映画ののち、渋谷へでも行こうと思っていたが大分疲れており、山手線に乗る気力なく下り方面の中央線に乗る。
吉祥寺で降り、しばしあたりをぶらぶら。年末ということもあってか人が多くいる。
マフラーとセーターを購入し、ちょっと気分がよくなった。